「活かすケア」に関して
確か、就職して2年目の年に東京は京王プラザホテルにて“世界リハビリテーション会議”が開かれました。愛媛の田舎から参加した私は世界に始めて触れました。そして、世界中から日本に来たリハビリテーション関係者が日本の病院を見学し、寝てばかりいる患者に疑問をもちました。“寝たきり老人”がマスコミを始め話題になり離床の重要性が少しづつ日本に伝わり始めました。寝てばかりいる患者に疑問をもっていた私は、離床活動を始め、レクレーションを工夫し、看護/介護職と共に能力を活かすための評価表を作り勉強会を重ね、いかに効率よく、介助者の負担なく、対象者の筋力を用いた介助を行うかの研究/開発を続けています。
1999年7月から半年間、CaliforniaはVallejoにあるカイザー病院で開催されている6ヶ月間のPNFスクールに参加しました。それまで、どのように人の運動を観察し、改善する方法論を知らなかった私は6ヶ月終了時には物凄い成長を遂げた自分に気がつきました。
6ヶ月コース終了者は日本人としては私で5人目でした。その後多くの日本人が受講していますが残念ながら今外国人は受講できません。その後、ヨーロッパのコース受講後、アシスタントシップを8年程重ね2010年にやっとインストラクターになれました。今思えば、カイザー病院から帰って来た時はPNFを十分分かったつもりでいましたが、まだまだ浅い能力だったと痛感します。基礎医学をやり直すことでPNFも進化した自分がいます。何故かといえば、PNFは基礎医学を元にしていますので、解剖、神経、生理、生体力学を学ぶことで、人の体とどのように対峙すれば良いかの理解が深まるのです。また、多くの欧米のインストラクターとアシスタント時代に一緒に講習会の仕事をすることで、評価、治療、教授法の“コツを”沢山学ぶことができたことも、成長できた大きい要因だと感じています。
MTはManual Therapyの略で日本語だと徒手療法となり、医師が用いると徒手医学/manual
medicine となります。
就職して2年目の私はPTとして専門家らしいことができず、仕事への満足感をリハ看護/介護で埋めていました。そのころAKAの講義を初めて受講し関節治療に魅力感じ10年間ほど勉強を続けました。カイザー時代にドイツ人PTから、ドイツではみんなマニュアルセラピーを勉強しているという話を聞き、いつかヨーロッパに関節系の勉強をしに行きたいと考えていました。すると、チャンスが訪れました。
2004年ドイツにあるDGMM-FAC(現在DGMSM)というマニュアルセラピー/徒手医学の研修センターに約4ヶ月留学する機会を得て、試験に合格し幸運にも日本人初のインストラクターになれました。その後、約5年間毎週のように講習会を行い、解剖、触診、評価、治療、教授法の知識と技術を培うことができました。2015年4月よりドイツ筋骨格医学会日本アカデミーの活動を再開し、チーフインストラクターとして、講習会はもちろん、ドイツ本部との交渉、会の運営に携わっております。ドイツは50以上のMTの政府認定組織がありそれぞれが研修センターを有し、1年間を通し全国各地で講習会を開催しています。学ぶセラピストの人数が多いため、世界中の優れた治療コンセプトがドイツに集まり続けています。最新の情報を得るためにはドイツを中心にしたヨーロッパからの情報収集が不可欠です。
カイザー病院の研修から帰ってきた私は、痙性に対する治療法で上田法が優れているという話を聞き上田法講習会に参加しました。その頃沖縄在住で沖縄にて上田法講習会をするべく準備を重ね、翌年開催することができました。その時インストラクターを目指さないかとのお言葉を頂き、勉強を重ね2010年にインストラクターになることができました。
2011年からはドイツはニュルンベルグのMedi
ABCにて上田法講習会を開催することができ、現在はブレーメンでも開催しています。近年は定員を超える参加者に恵まれることも多くなりました。上田法により過緊張の人に対して効果的に緊張が落とすことができますが、特養でも勤務している私には植物状態の対象者に対しては上田法がなくてはならないものです。ドイツ人PTも寝たきりに対しての良い治療方法は上田法以外にはないと言ってたのが印象的です。本来、小児CPを対象に作られたものですので、コミュニケーションがとれない過緊張の対象者にはとても良い治療方法だと感じていますし、脳卒中でも痙縮が強い人には驚く程緊張が落ちることがあります。また、上田先生を始めとして随分以前よりシステム論について研究しており、システム論の理解には随分と助かりました。
*学術論文
・ 健常者におけるS-P法の施行時間とFFDの関係
上田法治療研究会会誌 Vol.14 No.3 69-72、2003「筆頭」「査読論文」
・ 整形疾患の肩に対するリラクゼーションテクニックの紹介
上田法治療研究会会誌 Vol.16 No.1 33-38、2004「筆頭」「査読論文」
・ 筋肉へのアプローチ‐ハンズオンセラピーの可能性‐
理学療法学 第38巻第4号 292‐294、2011「筆頭」
学会発表等
・ 簡易立位保持測定法の紹介と歩行自立度判定基準作成の試み
第 34 回日本理学療法学術大会
1999年5月(横浜)
・ スポーツ腰痛に対しAKA とPNF の組み合わせによる治療を施行した1 症例
第 36 回日本理学療法学術大会
2001年5月(広島)
・ クロックトリートメントの紹介
第37 回日本理学療法学術大会
2002年5月(静岡)
・ リハビリテーションケア充実への取り組みと老健におけるPT の役割
愛媛十全医療学院紀要 投稿論文 2002年(愛媛)
・ 健常者におけるS-P法(上田法)の施行時間とFFDの関係
第38 回日本理学療法学術大会
2003年5月(長野)
・ マニュアルセラピーの日本の現状
第20回日本統合医療学会 2016年12月25日
・ Hold‐Relax with ダイレクト横断ストレッチの効果とその方法
IPNFA meeting in ミュンヘン 2016
・ 臥位でのトレーニングは立位安定性を向上するか?
IPNFA meeting in ワルシャワ 2017
講演会などに関する事項
・筑波技術大学卒後セミナー 「マニュアルセラピーの基礎」 2010年2月21日
・第21回 上田法治療研究会 学術大会 「上田法ドイツ講習会報告とドイツにおける手技療法の現状」
2011年 11月(長崎)
・第22回 上田法治療研究会 学術大会 「多方面からみた上田法治療効果理論の仮説」 「上田法と機能解剖」 2012 年11月(東京)
・第18回 石川県理学療法学術大会 「脳血管障害に対するPNFの応用」 2009年3月
・第43回 日本理学療法士協会学術大会 ポストコングレス 「痛み、ROM制限の原因を診断、治 療しパフォーマンスを改善する方法論(脊柱を中心に)」2008年5月 (福岡)
・第45回 全国学術研修大会 「筋肉へのアプローチ ハンズオンセラピーの可能性」
・第31回 地域リハビリテーション交流セミナー 徳島理学療法士会
高齢者に効果的な筋力トレーニング 2018年3月21日
・平成29年度第1回学術研修 長崎理学療法士会
痛みと運動療法 2017年10月21,22
〇技術講習会:数百回
非常勤講師
白寿医療学院
国立筑波技術大学